近年、日本社会では「外国人が生活保護を食い物にしている」という批判がSNSや街頭演説で繰り返されています。参政党はこの感情を利用し、2025年参院選で大きく議席を伸ばしました。しかし、この主張の多くは事実を欠いた思い込みに過ぎません。
そしてさらに危険なのは、この「外国人叩き」が単なる福祉論争にとどまらず、過去に世界を大きく誤らせたナショナリズムと同じ道筋を歩み始めていることです。
外国人への生活保護は「優遇」ではなく最低限の人権
まず押さえるべきは、外国人生活保護を「優遇」と捉えるのは誤りだという点です。
制度上の位置づけ
生活保護法の文言上は「国民」とされていますが、1954年の厚生省通知によって永住者・定住者など限られた外国人が行政措置として対象に含まれています。
2014年の最高裁判決も「法的権利はない」としつつ、「行政措置による保護は可能」と明言しており、現行運用は違法ではありません。
数字で見る現実
2023年度の生活保護世帯165万に対し、外国人世帯はわずか4.7万、比率は約2.9%。
「外国人に食い荒らされている」というイメージは、数字から見ても現実とかけ離れています。
担い手でもある外国人
外国人は消費税や社会保険料を日本人と同じように支払っています。むしろ労働市場の担い手として社会保障制度を維持する側に立っているのが実態です。少子高齢化が進む日本において、外国人の存在は「受益者」以上に「支え手」であることを忘れてはなりません。
「日本人ファースト」という甘美なスローガン
それでも「外国人が優遇されている」という感情は根強く残ります。その背景には、長引く経済停滞と国民生活の不安があります。
参政党はこの感情を巧みに利用しました。「日本人が冷遇されているのではないか」という漠然とした不安を「外国人」という具体的な“敵”に結びつけ、「日本人ファースト」という心地よい響きに置き換えたのです。
しかし、この手法は事実を超えて感情を動員する政治の典型。冷静な議論を奪い、社会を分断させる作用を持ちます。
ナチス・ドイツとの危険な類似性
歴史を振り返れば、同じような構造を利用した政治勢力があります。それが1930年代のナチス・ドイツです。
ナチスの手法
経済不況と社会不安を「ユダヤ人のせいだ」と転嫁
国民の不満を外部に集中させ、党への支持を固める
その先に軍拡、強権化、戦争が待っていた
参政党との共通点
経済的停滞の原因を「外国人」に押し付ける
「日本人ファースト」というスローガンで安心感を与える
その延長線上に、改憲・軍拡・核武装といった強国路線を掲げる
歴史学者や識者が「参政党の手法はナチスに似ている」と警鐘を鳴らすのは、単なるレッテル貼りではなく、この構造的な類似性ゆえなのです。
日本停滞の真の原因 ― 政治と経済の構造
本来、私たちが問い直すべきは「外国人」ではありません。
自民党と官僚、財界が進めてきた外資優遇、株主第一主義。
大企業や富裕層への減税と庶民への負担増。
防衛費の拡大に比べて社会保障への投資は後回し。
これらの政策が、日本経済の空洞化や国民の生活苦をもたらした本当の原因です。にもかかわらず、そのツケを「外国人」のせいにするのは、国民の目を真犯人から逸らす政治的操作にほかなりません。
排外主義が導く未来
外国人生活保護のバッシングは、単なる「福祉の問題」では終わりません。
自民党、参政党、国民民主などの改憲勢力は、この感情を利用して「国を守るため」という名目で憲法改正や軍拡を推し進める可能性があります。
「外国人に甘い国は滅ぶ」という感情論は、「だからこそ強い国家を」という軍国主義の論理に直結します。
これは、ナチスが「スケープゴートから全体主義へ」と突き進んだ危険な道を彷彿とさせます。
立ち止まり、冷静に
外国人生活保護の議論は、単に「税金の使い道」を超えています。社会が不満のはけ口を弱者に求めたとき、歴史はたびたび悲劇を繰り返してきました。
外国人は優遇されていない。むしろ社会の担い手である。
経済停滞の原因は外国人ではなく、日本の政財界の政策。
排外的なスローガンは、改憲や軍拡の布石となりうる。
今こそ、怒りを「弱者」ではなく「構造」に向けることが必要です。ナチスの歴史が示すように、感情に流されることこそが最大の危険なのです。
あなたはこの記事を読んでどう考えましたか?
関連サイト:
さくらフィナンシャルニュース公式サイト
YouTube
公式X
弁護士ログ
note
「さくらフィナンシャルニュース」をご覧いただき
ありがとうございます!
もっと手軽に最新情報を受け取りたい方は、
LINEの友達追加をお願いします!
さくらフィナンシャルニュース公式Line