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「AIが仕事を奪う」は本当か? ノーベル賞受賞者アセモグル教授が語る“現実”


近年、ChatGPTや画像生成AIの登場を皮切りに、人工知能(AI)の進化は目覚ましく、私たちの生活やビジネスに多大な影響を与えています。とりわけ、労働市場におけるAIの役割については、世界中で活発な議論が交わされています。

一部では、AIが多くの職業を代替し、大規模な雇用喪失をもたらすとの懸念が広がっています。しかし、2024年にノーベル経済学賞を受賞した、マサチューセッツ工科大学(MIT)の著名な経済学者ダロン・アセモグル教授や、ウォール街で30年以上の経験を持つゴールドマン・サックス・グループの株式調査責任者ジム・コベロ氏は、こうした見方に異を唱え、熱狂の裏に潜む「現実」と「リスク」を冷静に指摘しています。

AIが代替する仕事は全体のわずか5%

アセモグル教授は、AIによって完全に代替される、またはその影響を大きく受ける職業は、今後10年間で全体のわずか5%に過ぎないと見積もっています。
視覚的マッチングやパターン認識、データ整理といった“定型業務”にはAIが強みを発揮する一方で、人間特有の判断力や創造力を必要とする業務には、依然として人の力が不可欠です。

さらに、清掃や建設、接客、営業など、現場での対応力や身体性が求められる労働についても、AIによる代替は難しいといいます。「『AIが革命的な変化をもたらす』という主張の多くは、過剰な期待に支えられている」とアセモグル氏は警鐘を鳴らしています。

アセモグルが描く、AIブームの「3つの未来」

アセモグル教授は、今後のAIブームの展開として、以下の3つのシナリオを提示しています。

  1. 穏やかな収束型:熱狂が冷め、現実的な期待値に基づいた投資と導入が定着する。
  2. バブル崩壊型:現在の熱狂がさらに高まり、その後ハイテク株が暴落し、AIへの幻滅が広がる。
  3. 混乱型:企業が用途を明確にしないまま巨額のAI投資と人員削減を進めた結果、成果が伴わず、経済に悪影響を及ぼす。

最も起こりうる未来として彼が挙げるのは、2番目と3番目の「複合シナリオ」。AIが必ずしも企業の生産性を高めず、期待が外れたときの社会的・経済的インパクトの大きさを懸念しています。

AI投資の“審判の日”を予見─ウォール街のジム・コベロ氏

ゴールドマン・サックス・グループの株式調査責任者であるジム・コベロ氏もまた、AIへの過剰投資がもたらす危険性を指摘する一人です。彼は、1990年代後半のドットコムバブルや近年の仮想通貨バブルと同様の構造が、今まさにAI市場で再現されていると見ています。

コベロ氏の見解ポイント

  • AIが引き起こすとされる「経済革命」は過大評価されている。
  • スマートフォンやインターネットのようなインフラ革命には至らない可能性が高い。
  • 数千億ドル規模のAI投資が「大きな回収」に結びつく保証はない。
  • 「バブルの崩壊は時間をかけて静かに進行する」。

実際、AI関連株(例:NVIDIA、Broadcom、Super Micro Computerなど)の株価は急上昇していますが、その商業的成果はまだ確かなものではありません。
Lucid work社の調査によれば、AIに投資している企業の約半数は、明確なリターンを得られていないという結果も出ています。

一方で続く“AI信仰”─楽観派の期待と現実のギャップ

とはいえ、AIの未来に強い信頼を寄せる著名人も少なくありません。

  • JPモルガンCEO ジェイミー・ダイモン氏:「AIは活版印刷や蒸気機関、電気に匹敵する変革をもたらす」
  • ステート・ストリートのマイケル・アローン氏:「前例のない生産性の奇跡を起こす」
  • ゴールドマン・サックスのジョセフ・ブリッグス氏:「AIは最終的に全作業の25%を自動化する」

こうした期待は、Microsoft、Amazon、Alphabet、Metaといった巨大テック企業によるAI分野への積極投資を後押しし、
2024年4〜6月期だけでも総額500億ドル超の設備投資がなされています。

他の専門家と統計が示す“複雑な現実”

複数の調査でも、AIが労働市場に与える影響は「大きいが、単純ではない」とされています。

  • PwC調査:世界のCEOの約25%が、生成AI導入によって5%以上の人員削減が起こると予測。
  • 国際通貨基金(IMF)報告:AIは全世界の労働者の約40%に影響、先進国ではその割合が60%に達する見込み。
  • AP通信報道:アフリカなどの新興国では、アウトソーシング業務に従事する女性労働者が自動化の影響をより強く受けると分析。

つまり、AIが及ぼすインパクトは地域・性別・産業構造によって千差万別であり、一律に「仕事を奪う・奪わない」と語ることはできません。

人間を補完するAIへ─アセモグル教授の提言

アセモグル教授は、「AIを人間の代替としてではなく、補完的なツールとして活用すべき」と主張します。
例えば、AIを使って情報収集・分析の精度を高めたり、従業員の判断を支援したりするような導入方法です。

また、AI時代における最大の課題は「教育と再訓練」にあるとも述べています。
テクノロジーに対応できる人材を育てるために、企業と政府が連携し、スキルアップとリスキリングの仕組みづくりを進めていくことが不可欠です。

幻想ではなく、現実に根ざしたAI活用を

AIは確かに魅力的で可能性の大きい技術ですが、それを「万能薬」として扱うことは危険です。
アセモグル氏とコベロ氏の警鐘は、過去のバブル崩壊と同じ轍を踏まないための「冷静な羅針盤」といえるでしょう。

「AIに奪われるのは“仕事”ではなく、“想像力のない導入方針”かもしれない。」

私たちは今、AIとどう向き合うかという分岐点に立たされています。
ここで求められているのは、過剰な夢想でも、過剰な恐怖でもなく、「地に足のついたテクノロジーとの共存」なのです。

〜ダロン・アセモグル氏経歴〜
· 1967年9月3日:トルコ・イスタンブールに生まれる
· 1980年代後半:イギリス、ヨーク大学で経済学学士号取得
· 1992年:ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で数理経済学計量経済学博士号(Ph.D.)取得
· 1993年:MIT(マサチューセッツ工科大学)経済学部に着任(教授に就任)
· 2005年:ジョン・ベイツ・クラーク賞受賞(40歳未満の優れた経済学者に与えられる)
· 2012年:ジェイムズ・ロビンソンとの共著『国家はなぜ衰退するのか(Why Nations Fail)』出版
· 2019年:『The Narrow Corridor』邦題『自由の命運──国家、社会、そして狭い回廊』出版(ロビンソンとの再共著)
· 2024年:ノーベル経済学賞受賞
· 現在:MITでインスティテュート・プロフェッサー(最高位)として教鞭をとる

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参考記事:
AIに奪われる職はわずか5%、MITの著名経済学者が現実チェック
AIバブルに審判の時が来ると確信-ゴールドマンの株式調査責任者
Study says more women than men in Africa will likely lose outsourcing tasks to AI
国際通貨基金(IMF)HP
PwC JapanグループHP

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