「忖度」無しの報道 "なんか"日本の報道に違和感を感じている人へ ちょっとクセあり番組だけど フォローしたら良いことあるかも?
こんにちは。今回も引き続き、現在のコストプッシュインフレとその対策について解説していきます。
今回は、現在行われている対策の実態、そして過去のインフレと比較してなぜ今のインフレがより深刻なのかを掘り下げていきます。
取り上げるのは『奇跡の経済教室』第3章「甦ったスタグフレーション」。
消費者物価上昇率が5%を超えたインフレは、2021年以前に6回発生しています。その主な要因として、戦後の供給不足、朝鮮戦争やベトナム戦争、オイルショック、ブレトンウッズ体制の崩壊、サブプライム危機後の原油高騰などが挙げられます。
これらの多くは、供給制約(コストプッシュ)や需要超過(デマンドプル)によるものでした。今回の2020年代のインフレは、特に戦後直後の複合型インフレと酷似しており、より深刻であるといえます。
パンデミックによる供給不足、ウクライナ戦争による原油高騰、半導体不足、そしてコロナ禍で抑圧されたペントアップ需要とバイデン政権の大規模経済対策(1.9兆ドル)が複合的に重なっています。
ニューヨーク連銀は、インフレ要因の60%がデマンドプル、40%がコストプッシュと分析。一方、サンフランシスコ連銀のシャピーロは、過半がコストプッシュと推定しており、専門家間でも意見が割れています。
ただし、いずれも複合型インフレであるという点では一致しています。
2022年のFRBは急速な利上げを行いましたが、この対応は誤った政策になりかねません。インフレ期待によるインフレ進行は統計的に根拠がなく、実際には供給制約の補填が重要です。
さらに、利上げは景気後退を招き、住宅ローン金利の上昇など家計を圧迫。企業の借入コストも増加し、設備投資が抑制され、供給能力の減退を招きます。これはコストプッシュインフレをむしろ悪化させる可能性があります。
IMFや世界銀行、アンクタットは利上げによる景気後退リスクを警告しています。特にドル建て債務を抱える新興国は、FRBの利上げにより通貨安、資本流出、債務不履行リスクに晒されています。
また、ドル高は世界的に輸入物価を押し上げ、コストプッシュインフレを加速。IMFすらも慎重な対応を求める状況は、利上げ政策の危険性を物語っています。
アンクタットは利上げだけでなく、戦略的価格統制や社会的弱者への支援、産業政策を提言しています。供給力を支えるためには、財政出動が不可欠です。インフレが進行しても、それを補う形での支援が必要です。
70年代のインフレは石油危機に起因する原油価格高騰が中心でしたが、2020年代のそれはより広範な供給制約(エネルギー、食料、半導体、労働力)によるものです。また、人口構造も異なり、今は少子高齢化による労働力不足が深刻です。
今後のインフレは構造的な側面が強く、気候変動、軍事的緊張、不確実性の増大が投資を抑制し、さらなる供給力の低下を招きます。
一方、ポジティブな展望として、労働力不足による賃上げ圧力、国内投資への回帰が挙げられます。ただし、株主偏重主義を改めなければ、投資の恩恵が労働者に届かない可能性もあります。
今起きているインフレは、単なる価格上昇ではなく、構造的で深刻な問題です。利上げだけでは解決できず、産業支援や財政出動、そして長期的な経済構造改革が必要です。次世代のためにも、正しい知識と政策判断が求められています。
次回は、この構造的インフレがさらに進んだ先にどのような経済社会が待ち受けているのか、引き続き解説していきます。
コラムニスト:根本 良輔(ねもと りょうすけ、1994年6月21日)
東京都練馬区出身。くりのみ保育園、大泉南小学校、大泉第二中学校卒業。石神井高校、芝浦工業大学を卒業後、東京大学大学院へ進学し(のち中退)、電気工学の研究に従事する。会社経営者、政治活動家、つばさの党幹事長。二児の父。