――昭和・平成・令和を貫く恋愛と結婚の変遷を読み解く
※ 独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
荒川和久氏 記事参照
1. 昭和・平成・令和における恋愛と結婚の特徴
昭和:恋愛より結婚が優先された時代
昭和の高度経済成長期からバブル前夜にかけて、日本社会には「一億総中流」という安定感があった。個人の恋愛可処分時間(週平均4時間8分)こそ少なかったが、「恋愛しなくても結婚できる」社会構造が存在していた。
お見合い結婚は一般的で、親族や会社、地域の仲介が機能し、結婚はほぼ全員が通過する「皆婚社会」であった。結婚は「生活基盤の安定」と「社会人としての通過儀礼」であり、恋愛が必須ではなかった。
平成:恋愛は盛んだが結婚に結びつかない時代
ペアーズ調査で最も恋愛可処分時間が長かったのは平成世代(6時間36分)。大学進学率の上昇、バブルの享楽、男女雇用機会均等法以後の自由恋愛文化など、恋愛を楽しむ環境は整っていた。
しかし就職氷河期を経て「努力しても報われない」体験を味わった世代は、経済的不安を抱えたまま結婚適齢期を迎えた。結果、第三次ベビーブームは起こらず、恋愛は盛んでも「結婚」に至らないという構造が定着した。
令和:恋愛も結婚も遠のいた時代
令和世代(恋愛可処分時間は4時間34分)は、昭和と同程度の時間を恋愛に割いているが、婚姻数は激減している。若者の手取り収入は伸び悩み、非正規雇用や将来不安が蔓延。
結果、「どうせ無理」「リスクを取らず小さく生きる」という選択をする人が増えた。恋愛そのものへの意欲が弱まり、マッチングアプリでの出会いがあっても「交際」や「結婚」へ進まない現象が顕著だ。
2. 清潔感の過剰な押し付けと恋愛YouTube文化
近年、恋愛系YouTubeやSNSでは「モテるには清潔感が必須」と強調される。しかし実態は「清潔感の押し付け」に近く、若者を過度に萎縮させている。
・美容院で数万円のカットやカラー
・高額スキンケアや脱毛
・ブランド服やアクセサリー
・髭の青い跡は不潔。脱毛が清潔感
・髪の毛の薄い男性は不潔、発毛、育毛が清潔感
こうした「清潔感産業」が拡大し、「最低限」ではなく「上級者仕様」を標準とする空気感が、恋愛のハードルをさらに上げている。特に恋愛中間層(人口の約4割)は「清潔感不足で恋愛資格がない」と自己否定しやすく、恋愛から撤退する傾向を強めている。
3. 2次元の恋愛コンテンツが現実を代替する時代
令和の特徴は「2次元恋愛コンテンツの浸透」である。
・アニメ、漫画、ゲームのキャラクターに感情移入
・Vtuberや配信者との擬似恋愛
・AI彼氏/彼女アプリの普及
これらは孤独感を癒す一方、「現実の恋愛」への動機を弱める。2次元恋愛は失敗がなく、コストも低く、裏切りもない。とりわけ受け身型の中間層にとっては、現実恋愛のリスクよりも心地よく、安全な選択肢となっている。
4. データで見る「恋愛・結婚空洞化」
童貞・処女率の上昇
・国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、30代前半男性の約30%、女性の約25%が性交未経験(2021年)。
・20代では4割以上が未経験というデータもある。
婚姻数の激減
・1980年代の年間婚姻数は約100万件。
・2023年には50万件を割り込み、半減。
マッチングアプリの利用拡大
・令和世代の20代前半では、出会いの手段のトップがアプリに。
・一方で、成婚率は1割に満たず、出会いは増えても結婚にはつながっていない。
5. 昭和のお見合い vs 令和のマッチングアプリ
昭和のお見合い
・親や会社が仲介
・プロフィールや釣書で相手を選定
・条件重視(職業、家柄、収入)
・成婚率が極めて高い
令和のマッチングアプリ
・本人同士で検索し、メッセージ交換
・写真・自己PRが重視され「スペック競争」に
・気軽に会えるが、同時進行・既読スルー・ゴースト化が常態化
・「条件マッチ」よりも「市場価値勝負」になり、格差が拡大
違いは「仲介者の有無」と「条件の透明性」である。昭和では「結婚ありき」の仕組みが整っていたが、令和では「恋愛市場での勝者」だけが結婚に至る。
6. 令和の恋愛で気を付けたいこと
① 経済的不安を緩和する自己戦略
結婚は経済力と直結する。副業や資格取得など、安定収入を確保することは「恋愛以前の前提条件」となっている。
② 「清潔感の押し付け」に振り回されない
過剰な消費は不要。最低限の身だしなみ(清潔な服・爪・髪・匂い)を守ることで十分。SNS的な過剰美意識に惑わされず、現実的な基準を知ることが大切だ。
③ 2次元恋愛と現実恋愛のバランス
アニメやVtuberに癒されつつも、現実での人間関係づくりを止めないこと。現実恋愛の摩擦やリスクを「経験」として肯定する視点が必要。
④ 小さなリアルな出会いを重ねる
マッチングアプリ一辺倒ではなく、趣味サークル、ボランティア、地域活動など「アプリ以外の出会いの場」にも積極的に参加する。
⑤ 中間層の「一歩踏み出す力」を育てる
最も影響を受けているのは恋愛中間層(全体の4割)。彼らが萎縮せず「まず会ってみる」という行動を取れるかどうかが、恋愛・結婚全体の行方を左右する。
まとめ:令和の恋愛を取り戻すには
ペアーズ調査から見えてくるのは、恋愛時間そのものよりも「経済的停滞と将来不安」が恋愛・結婚を遠ざけているという現実である。
昭和は「恋愛できなくても結婚できた」社会、
平成は「恋愛できても結婚できなかった」社会、
令和は「恋愛も結婚もできない」社会。
この流れを変えるには、
・経済的安心をどう得るか
・清潔感や美意識の過剰圧力にどう抗うか
・2次元と現実をどう折り合いをつけるか
・中間層の若者がどう一歩を踏み出すか
が重要になる。
「婚姻空洞化」が進む令和の日本で、恋愛状態になるには「市場に勝つ」ことではなく、
「自分に合った出会い方を見つけ、小さな一歩を続ける」ことが最も現実的な道筋なのだろう。
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